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明日への視角

キッズウィークのゆくえ − 子どもの視点からの幅広い議論を −

泉雄一郎【日本教職員組合中央執行委員長】

 キッズウィークが教育再生実行会議で打ち出され、「骨太の方針2017」で2018年度から設定すると閣議決定された。夏休みなどの学校の長期休業の一部を別の時期に移し、保護者も子どもと一緒に休暇をとり、家族で外出するなど、大人と子どもが向き合う時間を確保するため、「休み方改革」の一環として実施するのだという。そのねらいには、年次有給休暇の取得率アップと長期休暇の分散化により、交通機関や宿泊施設の混雑緩和などをはかることにもあるとされている。

 子どもの視点からキッズウィークを考えてみよう。子どもたちが社会体験や自然体験などの様々な活動を通じて、豊かな人間性を身につけていくことは大切なことである。こうした体験活動の重要性は、「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむとして、学校5日制導入の際に打ち出された考え方ではなかったか。
 しかし、「ゆとり教育」批判に伴う「土曜授業」の導入、次期学習指導要領の授業時数増への対応としての土曜日活用の例示などが今日的状況となっている。子どもたちにとっては、様々な活動に参加できる週末が奪われつつある。

 学校5日制導入の際にも、子どもたちの週末の過ごし方にかかわり、共働き家庭の子どもをどうするか、障害のある子どもの支援をどうするかなどが課題となった。キッズウィークにも、サービス業に従事する家庭の子ども、単身赴任の家庭の子ども、「ひとり親家庭」の子どもへの対応など、同様の課題がある。保護者の経済状況や労働環境によって、子どもが多様な活動に参加する機会を保障されず、子ども社会に新たな格差が持ち込まれることにつながらないか。

 週末には、教育機関・地域社会の連携による体験活動の蓄積がある。学校5日制導入の趣旨に立ち戻り、子どもたちが豊かな週末を過ごす条件整備を合理的配慮も含めて改めて施策化することが大切ではないか。
 子どもの権利条約第31条に規定されている「休息及び余暇についての権利」を行使する主体は子どもである。キッズ=子どもの視点からも議論がさらに展開されることを期待している。

生活経済政策2017年10月号掲載